チョコレート・エッセイ  by Kororon

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虎屋の若葉陰 (わかばかげ)

南部風鈴

 

 

虎屋の和菓子『若葉陰』は ”水面に浮かぶ若葉の陰を金魚がおよく様” を表しているという、透明な四角の寒天の中に閉じ込められた若葉と赤い斑点のある金魚、実に絵になる和菓子、夏のお菓子だ、しばしその造形に見とれて暑さも忘れる、もったいなくて食べられない、なんて思ったり、黒もんじで若葉陰を切る段になると、金魚を真っ二つにしてしまうのは忍びない、なんて思ったり、これほど食べる前の長時間にわたる鑑賞に堪えうるお菓子というのもそうあるものではない。

 

子供の時に我が家でも金魚を飼っていた、水槽で家の中で、水槽に浮草を浮かべて、ブクブクと酸素を出して、水面に浮かぶ浮草の下なら金魚は泳いでいた、水槽ごしにも金魚が見ることができた、若葉陰の ’若葉の陰を泳ぐ’ というのとはだいぶイメージが違う。

 

もう少し、多少イメージが近づくかなと思われるのは、庭に穴を掘って小さいたらいを埋めてそこに水を張って金魚を飼っていた時か。やはり浮草を浮かべていた、鑑賞するには上から眺めるのだから、浮草の陰になって金魚はよく見えるとはいかなかった、それに、やはり金魚が泳ぐのは浮草の下だ。やがて、猫に狙われる、といって、たらいの上に網をかぶせてしまったものだから、ますます金魚は見えなくなった。やはり、和菓子 ’若葉陰’ の風情からはかなり遠い。

 

やはりガラス鉢なんだね、このお菓子が生まれたのは大正時代だ、なので金魚を飼うにしても今風の四角い水槽、ではなかった。球型をした、まるいかわいらしい金魚鉢に、若葉を浮かべて、その若葉に見え隠れしながら泳ぐ金魚。

透明な寒天の中を泳ぐ金魚、いや、寒天の中で静止する金魚か、ガラス鉢の金魚と姿を重ね合わせながら、美味しくいただき、そして感じる、夏の涼、でした。